改正障害者基本法 「可能な限り」(衆議院内各委員会議事録)

「可能な限り」は合理的配慮の実施に「過度の負担」以外の口実を与えるものになりかねない。
医療を必要とする重度の障害者が地域で生活する場合であっても、障害者自身が生活する基盤を選択する権利がある。それを生命や心身の安全を確保するために、医療、リハビリテーション、その他の専門家がそれぞれの法律に従って処置する。
アメリカで自立生活運動を起こしたマイケルウィンター氏からアメリカでは鉄の肺に入っている障害者でも大学で学ぶ権利が保障されると聞いて、びっくりしたことを思い出した。

コミュニケーションの支援も、あらゆる主体があらゆる障害者の適切な意思疎通の手段を確保できる訳ではないにしても、最初から「出来る限り」という恣意的な判断の入り込む余地を作っては力の大きい行政や企業、雇用主などの論理が優先されてしまう。

ラビット 記
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○山崎(誠)委員
では、次のポイントなんですが、大事な条文で、第三条の条文、どこでだれと生活するかの選択の機会、あるいは地域社会において他の人々と共生することを妨げられないというような内容。あるいは三条の三号では、意思の疎通の手段。あるいは十四条、医療、介護給付、リハビリテーションの提供を身近な場所において受けられる。それから十六条は、教育の場面ですね。障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と教育が受けられる。あるいは十七条の、療育
に関する規定。
これらの規定に「可能な限り」という文言がついている。これはほかの場面でも議論になっていると思うんですが、この「可能な限り」という文言をつけている趣旨、理由をお尋ねしたいと思います。

○村木政府参考人 御指摘の「可能な限り」という文言でございます。個別に条文を挙げていただきましたが、条文ごとに御説明をしたいと思います。
まず、第三条の第二号、第十四条第五項あるいは第十七条につきましては、例えば、障害が重度であって必要な設備の整った施設で適切な医療的ケアを受けなければならない方、こういった方々は必ずしもその身近な場所では適切な支援を受けられない場合もあり得るということも考えまして、「可能な限り」という表現を入れたところでございます。
また、第三条第三号につきましては、企業、個人等を含む社会を構成するあらゆる主体において、必ずしも常にあらゆる障害者の意思疎通手段の選択の機会を確保することができるというわけではないということも考慮をいたしまして、「可能な限り」という規定を入れたところでございます。
また、第十六条第一項につきましては、例えば聴覚障害のある児童生徒など、本人にとって最も適切な言語、コミュニケーションを習得するために、本人、保護者が特別支援学校や特別支援学級等における教育を受けることを希望する場合などもあることを考えまして、「可能な限り」というふうに規定をしたところでございます。
http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/kaikaku/s_kaigi/k_34/pdf/s5.pdf 11Pから12P

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○塩川委員
そこで、大臣にお尋ねしますが、共生する社会を実現する上で、地域生活についての選択の機会を「可能な限り」という形で制限、制約するような規定というのはそもそも不必要なんじゃありませんか。必要ないんじゃありませんか。
蓮舫国務大臣 お答えいたします。
改正案では、まさに法の目的におきまして、「全ての国民が、障害の有無によつて分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会」の実現を掲げておりまして、第三条において、そのような社会の実現を図る上で基本となる事項を規定しております。
御指摘いただいたこの第三条の第二号ですが、「地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと。」を規定しておりますが、ここに「可能な限り」という文言を入れておるのは、例えば、障害が重度でありまして必要な設備の整った施設で適切な医療的ケアを受けなければならない者等は、必ずしも、どこで、だれと生活するかについての選択の機会が確保できない場合もあり得ることから、こうした規定をしているところでございます。御理解いただければと思います。
○塩川委員 いや、そもそも基本法ですから、選択の機会が確保されるように努めるというその方向こそ基本法で示すべきなんだ、このことがまさに問われているんじゃありませんか。「地域社会において他の人々と共生することを妨げられない」としている、住みたいところに住むという当然のことを規定しようとしたにすぎない規定であり、それなのに、「可能な限り」という規定を入れる必要があるのか、このことが厳しく問われるわけであります。
そもそも、権利条約の十九条は、この条約の締約国は、すべての障害者が他の者と平等の機会を持って地域社会で生活する平等の権利を認めるものとし、障害者が、この権利を完全に享受し、並びに地域社会に完全に受け入れられ、及び参加することを容易にするための効果的かつ適当な措置をとるとしております。
大臣にお尋ねしますけれども、障害者権利条約には、当然のことながら、「可能な限り」という文言などはないわけです。ですから、この障害者権利条約を本当にこの日本で具現化していく、そのいわば土台となる障害者基本法に「可能な限り」という規定を入れる必要があるのか、このことが厳しく問われるわけですが、いかがですか。
蓮舫国務大臣 御指摘の「可能な限り」においてでございますが、先ほど来、私ども、園田政務官からも御答弁をさせていただきましたが、できればすべての皆様方が、どこで、だれと生活できるか、障害を持っている、持っていないにかかわらず、分け隔てなく共生する社会を実現すること、それを私たちは障害者基本法の法理念と考えているところでございますが、現実問題として、医療的な部分でその理念において生活できない方たちもおられるということを考えて「可能な限り」という文言を入れさせていただいたことについては、ぜひ御理解をいただきたいと思っております。
33Pから34P

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○塩川委員 ただいま議題となりました障害者基本法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
原案は、共生する社会を実現するなどの目的規定の整備、社会的障壁概念による障害者の定義の拡充など、この間の障害者運動により、現行の障害者基本法を一定程度前進させるものです。その一方、多くの障害者が求めてきた障害者権利条約の趣旨を徹底させるという点で極めて不十分であり、また、障がい者制度改革推進会議の第二次意見を十分に反映したものとは言えません。
本修正案は、主として、総則に関連して以下の修正を求めるものです。
本修正案は、第一に、原案第三条二号、三号、第十四条五項、第十六条、第十七条における「可能な限り」との規定を削除するものです。
第三条二号についての質疑でも明らかにしたように、障害者権利条約は、無限定に地域社会で生活する平等の権利を認めております。その精神を徹底するために、他の条文も含めて、「可能な限り」との規定は削除すべきであります。
第二に、原案第二条の定義規定に、障害者権利条約の合理的配慮の定義に基づく定義規定を追加し、合理的配慮を否定することを差別とする規定を追加することです。障害者基本法改正に引き続いて、差別禁止法の制定が予定されており、障害者権利条約に基づいて、差別の規定をより明確にすべきです。
第三に、原案第二条一号の障害者の定義規定に「周期的に若しくは断続的」という規定を追加することです。これにより、難病などの障害がより明確に基本法に位置づけられることになります。
以上が、本修正案の趣旨であります。
38P