要約筆記者派遣事業の意味を確認

060824_0837~001.jpgこの8月、要約筆記者事業について、いろいろな関係者団体の中で議論されていた。
8月10日に、聴覚障害者自立支援法対策中央本部事務局会議が開かれている。
この時、厚生労働省が8月24日の障害保健福祉関係主幹課長会議で、埼玉県と松江市のコミュニケーション支援事業の事例を紹介するが良いか聞かれた。
この二つはコミュニケーション支援事業が無料で行われているように市町村求めていること、市町村で手話と要約筆記の双方を扱うなど積極的な面はあるが、要約筆記奉仕員派遣事業として行われることから全難聴は反対した。
要約筆記は2000年に社会福祉法改正時に第2種法定事業になっており、今回の支援法で市町村の必須事業となったこと、全難聴が要約筆記事業の検討の中で要約筆記の専門性を明らかにしてきたことなどから、要約筆記「者」派遣事業で実施されるべきだ、今は要約筆記奉仕員が派遣にあたるが、奉仕員と要約筆記者の役割の違いを派遣される人が自覚しなければならないため、補習研修が必要になることを説明した。
このことは、ろう団体、手話通訳関係団体の理解が得られ、厚生労働省に補足説明を出すよう要望することになった。
実際には埼玉県の「コミュニケーション支援事業について」のみが配布され、補足説明はなかったが。

コミュニケーション支援事業の実施要項自体に要約筆記者を派遣するとあるのに、要約筆記奉仕員派遣事業になってしまったのは、要約筆記事業について、二年間全難聴と全要研などが検討してきた内容が各都道府県に理解されていないことがある。
埼玉県にしても、無料化が盛り込まれ、手話通訳事業については市町村が直接実施する場合、広域事業として実施する場合、聴覚障害者センターで実施する場合と詳細に提示されているのは埼玉県ろう団体や手話通訳関係団体の運動の成果だろう。
しかし、要約筆記奉仕員派遣事業のままになったのは、埼玉県の聴覚障害者の運動の現時点の到達点とも言える。難聴者団体側の理解が不足していたこと、ろう、手話関係者が要約筆記事業について関心がなかったのか、別の考えがあったか運動がかみあっていなかったかもしれないことも、そのことを全難聴がとらえて対応しきれていないことにも原因があるだろう。

難聴者、要約筆記者側はこれまでのろう運動に学んできた。二年間一緒に要約筆記事業を検討してきた手話通訳関係団体や関係機関からも検討の意義や報告書の内容を積極的に紹介して欲しい。

我が国の聴覚障害者運動はまだまだ力を集約しきれていない。ろう、中途失聴・難聴者問題はコミュニケーション支援事業をきっかけにもっと掘りさげられる必要がある。

全難聴と全要研は厚生労働省に対する要約筆記者養成・研修事業に関する要望をまとめた。これが要約筆記事業の新しい発展につながることを期待したい。

ラビット 記