大学病院の補聴器外来の問題点



補聴器販売店で直接購入するのと違って、大学病院の補聴器外来で調整される場合、耳鼻科医の診察のもとで、補聴器の適合を受けることになる。


1.補聴器販売業者は医師の監督下にあるかどうか。
医師は診察をするが、補聴器の調整(フィッティング)や操作などの説明は業者に任せている。
A大学病院の補聴器外来は、初診を経て、担当医と聞こえの問題を説明し、補聴器の適応となれば、言語聴覚士による聴力検査を受けて、適切な補聴器を選定してもらって、一定期間の試聴後、処方される。
イヤモールドの型取りは医師が行ったが、イヤーモールドの作成は補聴器販売業者だ。補聴器販売業者が補聴器の装着や使用方法を説明する。


医師は、患者を診察し、聴力検査結果から、補聴器を選択し、販売業者に用意させる、高度難聴用ならイヤーモールドが不可欠なので耳型採取と作成等を指示する。
障害者自立支援法の機種と対象外の機種がある場合に、両方とも試聴ができるか。
A大学病院の業者は、支援法対象の機種を希望したら「試聴は出来ない、買い取りになる」と言った。補聴器の装着や説明を受けるのは診察室の隣の部屋で、医師の見えないところなので、どういう説明をしているか医師は知っているのだろうか。


支援法対象機種が自分の聴力に出力が不足しているとか騒音の中でも良く聞こえる機能がないとかという理由なら納得も出来るが、支援法の機種は利幅が少ないからという理由で試聴を断るということは、補装具の給付により障害者の自立を支援する法の趣旨にも反するし、もっと良く聞こえるようになりたい、もし合わなかったら自費で高額の補聴器を購入しなければならないという難聴者の心理や不安に付け込み、結果的に高額の補聴器の購入に追いやることになる。


2.医師はメーカーと機種をどうやって決めるか説明が不十分
大学病院には日替わりで複数の販売業者が入っている。どの補聴器メーカーの機種を選定するかは特に希望を言わなければ医師の指示によることになる。


患者は、難聴に関わる治療を受けていたり何らかの理由があって、補聴器外来を受診しているのだろうが、聴力を取り戻すために補聴器を装用すること、補聴器自体に知識がない人が大部分だろう。難聴の種類に付いても知識がないかも知れない。


3.障害者自立支援法の申請が出来ることを助言されるかどうか。
障害者自立支援法で補聴器購入の補助が受けられることは一般には知られていない。補聴器メーカーのカタログにも、「福祉法対象機種」は小さい文字で印刷されていて目立たない。
補聴器販売店でも、顧客に対して身体障害者の手帳交付を受けて申請したら良いとはしにくいのではないか。理由は、顧客自身が「身体障害者」とされることを受け入れないかも知れないからだ。
「福祉法対象機種」ではなく、「障害者自立支援法対象機種」とあった場合、我が国は障害者であることをマイナスに受け止めることが一般的なので、顧客は「断る」かも知れない。


医師は、患者に対して聴力レベルが判明した時点で、支援法の補助について説明することになっているのだろうか。病院内にはそうしたことを説明する掲示も 資料の配布もない。補装具購入の補助申請は、障害者の「権利」なので、知らされなければならないが、医師から見れば、それは行政の役割ということになるのだろうか。


障害者自立支援法対象の機種なら、市町村に医師の意見書等を付けて補助を申請することになる。同法対象機種でなくても、いまは補助なので差額を負担すれば適切な機種を選定できる。


4.補聴器販売業者の資格は明示されていない。
医師の監督のもとで、補聴器のフィッティングを行っている場合、補聴器技能者の資格とかの明示はなかった。逆に、資格を持っていなさそうな人まで白衣を 着用して、医療担当者であるかのような誤解を与えかねない。
大学病院の中の補聴器販売業者は店舗ではないので、「認定補聴器専門店」の看板を掲げることが出来ない。
http://www5.techno-aids.or.jp/nintei.php
認定店なら、適切な設備や顧客管理、他の接客している顧客との区分などが示されているが、病院の中はそうなっていない。


補聴器は元々一人一人の聞えに合わせてフィッティングして聞く商品で、薬事法でクラスⅡの管理医療機器として、販売方法が厳しく規制されている。
日本耳鼻咽咽科学会も医師の管理下で補聴器を購入されるべきことを基本方針にしている。
また補聴器販売側も業界の自主組織の認定補聴器専門店が組織され、(財)テクノエイド協会の認定補聴器技能者制度が発足し、日本補聴器販売店協会の憲章や日本補聴器工業界の倫理綱領にも難聴者の保護がうたわれている。
http://www.jhida.org/intro/kensyo.html
http://www.hochouki.com/about/code/index.html

大学病院は診療が医学と医療の発展に資するために提供されて高い公益性がある。病院と販売店、医師と業者、認定補聴器技能者との関係を明確にしないと、患者の医師と補聴器技能者に対する高い信頼を揺るがしかねない問題になる。


ラビット 記