DAISYとデジタル放送 放送のアクセス保障のために
「ニーズを把握していれば技術的な規格は盛り込んでおけるのですが、DAISYとデジタル放送の関係はどうなっていますか。デジタル放送のコンテンツのDAISY規格の変換とか議論されているのでしょうか。」
このことについて、DAISYの推進者の河村宏氏から、丁寧なご説明を頂いたので紹介する。
○SMIL3.0 動画コンテンツの構成と配信にかかわる規格。
○Webのアクセシビリティーを確保するWebアクセシビリティーガイドライン
○出版物のアクセシビリティーを確保するDAISY規格
がある。
障害者権利条約が発効すれば、ITUやISOに実施義務を与えることか出来ること
個別のニーズを持つ障害者団体が関わって、アクセシブルな統合的コンテンツの国際標準規格を制定することが必要
ラビット 記
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DAISY規格は原則として2年に1回見直していますが、今回Webで世界中に公示し
ている要望調査は3月締切です。
http://www.daisy.org/news/news.shtml#newsitem348
DAISY 規格のひとつの特徴は、すでにある標準規格のみを用いて自らの規格を作ることですが、規格に動画を導入するためにほぼ3年間を費やしSMILというW3C の規格の改定に取り組み、今改定案が公示されているSMIL 3.0の成立を待って、それを基礎にして動画にかかわる仕様を固めようとしています。
DAISYにおける動画は、聴覚障害、LD、知的障害等の分野で強く要望されているものであり、更に動画が急増するブロードバンド時代の標準技術としての発展をはかるためのものです。
SMIL 3.0の規格案には、DAISYプロファイルという項目があり、そこでは、盲ろう者がストリーミングでニュースや災害情報を受ける時のアクセスを可能にすることを利用事例として挙げています。
つまり、解説(音声+テキスト)と字幕(テキスト)をそれぞれ独立のテキストとして区別できる形で携帯電話やPCにストリーム配信することによって、盲
ろうの利用者がまずは振動等によって、登録しておいた番組や位置情報と組み合わせた避難警報の受信を知り、一般に送信されると同時に同じコンテンツをテキスト情報(画面解説テキストおよび字幕)で受け取ることができる規格です。
端末側で受け取ったテキストを点字にするかモールス信号のような振動にするか、将来開発されるであろう手話グローブにするか、あるいは弱視で難聴の方の場合はどうするかなど、たくさんの可能性がありますが、規格としては、動画配信に関してはこのような幅広い利用を考えて作っておくという考え方です。
http://www.w3.org/TR/2007/WD-SMIL3-20070713/smil-daisy-profile.html#q22
SMILの最新規格は2.1で、これまでの規格改定には、Nokia、SONY、KDDI、アクセス、リアルネットワークなどの産業界のほか、CWI、INRIA等のヨーロッパの国立のIT研究機関、そしてDAISYコンソーシアムと国リハセンターが貢献してきました。
W3Cのコンテンツアクセシビリティーガイドラインの2.0案には、たくさんのSMIL活用事例がありますが、SMIL 3.0はより広いアクセスを展望したブロードバンド時代に対応する動画コンテンツの構成と配信にかかわる規格です。
すべての人のWebのアクセシビリティーを確保するためにWebアクセシビリティーガイドラインがあり、出版物のアクセシビリティーを確保するためにDAISYがあります。
放送とWebと電子出版が融合するブロードバンド時代のアクセス確保はたいへん複雑な課題ですが、縦割りを排し、個別のニーズの実現をユニバーサルデザインに統合するという国連障害者の権利条約の指針に沿ってのみ解決可能だと思います。
SMIL 3.0はそれを実現するための要素の一つとして開発されています。
これを解決できればしばらくは安心、できなければ、今後10年間はアクセス暗黒時代になる天下分け目の1-2年ですが、権利条約を一刻も早く発効させて ITUやISO等の国連の標準に関わる機関にその実施の義務を与え、様々な固有のニーズを代表する障害者の参加の中で国際標準規格を決定していくことが最も重要だと思います。
河村 (国リハ研究所 & DAISYコンソーシアム)
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