職場の要約筆記派遣



要約筆記者の派遣元に新たに今年度登録を申し込まれた人を対象にした説明会が約24人くらい参加して開かれた。

派遣は、都県レベルの要約筆記派遣は形の上では残っているが、区市の契約による派遣、企業や個人の依頼による派遣が大部分だ。

その中でも、企業に派遣される要約筆記は少ない。企業が派遣を依頼する場合、難聴者が企業に要望して派遣したというよりは企業が新人研修の際に難聴者に配慮して派遣したケースが多いのではないか。
難聴者が職場に要約筆記を派遣を希望する場合、幾つものハードルがある。

一つは、難聴者自身が要約筆記を通訳として認識しているかどうかが鍵だ。
さらに、自分の職務に必要なコミュニケーション支援の力を持っていることに確信が持てなければ、以下に述べる要約筆記に対する誤解、偏見を払拭出来ない。

二つ目は、難聴者と要約筆記に対する理解がないか浅いことだ。
少しゆっくり話せば分かるだろうとか、後で会議の結果を知らせるからとか私がメモをとってあげるから大丈夫と言われたりする。

三つ目は、職場に第三者を入れることに対する不安感や違和感だ。企業秘密の漏出に対する不安感があるのか、単なる口実なのかは分からないが。

四つ目は、費用だ。奉仕員と違って、要約筆記「者」の派遣単価は手話通訳ほどではないが、地域のパートや派遣会社のそれよりかなり高い。


これらのハードルを越えるには、現在の就労に対する要約筆記が技術の上でもモラルの上でも高いレベルを維持していなくてはならない。
要約筆記に対する信用はいったん崩れると中々取り返しが付かないからだ。

企業や一般社会に対して要約筆記そのものの理解を求める啓発も必要だろう。

そうして初めて、聴覚障害者の権利保障としての合理的配慮に、要約筆記が入ってくる。


ラビット 記