人工内耳の聞こえ方(5) 聴解能向上の道程



日中の勤務中は、同僚との会話のレスポンスが大事なので、人工内耳だけでは聞き取れず、補聴器も使用している。

右がデジタル補聴器。オーチコンSUMO DM。左が人工内耳。コクレアN24、フリーダム。両方ともデジタルだ。
右の補聴器のMT回路は電話器の拡声機能と一緒に電話を聞くのに大変効果がある。

一日補聴器と人工内耳を使って、会社の門を出ると補聴器を外して人工内耳だけにする。ほぼ1時間後は自宅のテレビの前にいる。

昨日は、テレビの声が前より聞こえる感じだ。「世界遺産」のテーマ音楽の重厚メロディがわかる。ナレーションが言葉として完全ではないが抑揚や強弱を持って聞こえる。キャスターや登場人物の顔が見えれば分かる。
声だでけももう少しで聞き取れそうな気がする。


人工内耳を使い始めて、140日目だ。左耳の蝸牛に入った電極で刺激を受けた聴神経が脳に向かってシナプスを伸ばしていくのが見えるようだ。

左耳は、生来50何年間、音の刺激を受けたことがない。高校時代はヘッドホンで音楽などを聴いていたし、手術前の1ヶ月ほど補聴器をしていたからまったくないわけではないが、50何年間という時間の長さの中ではほんのわずか、一瞬といってもいいくらいだ。
それが、たった140日間で音は聞こえるようになり、言葉もそれらしく聞こえるようになるというのは脳の可塑性というか、感動的だ。


ラビット 記
写真はロバート・レッドフォード監督の「大いなる陰謀」で、ロバートレッドフォード扮するマレー教授と議論する若者はトッド・ヘイズ。無名の俳優の抜擢だが、考え方といい物言いといい身近にいる難聴者を思い出してみていた。
大手ニュース配信社の良識ジャーナリストを演じるメリル・ストリープは、トム・クルーズ扮する大統領になろうとする野望を隠さない上院議員との駆け引きを演じる。その心理的描写は流石だ。