難聴者の人工内耳「適応」の拡大と対応



人工内耳の「適応」検査で聴力検査を受けるが、これはちょっと落とし穴というか、長年の難聴者にとっては実際の聞き取りの状況とは違う結果が出る。

検査は、通常の各周波数の正弦波の音を出力音圧を変えながら聞く検査の後に、単音や単語を聞く語音識別査を受ける。
この検査はスピーカーから聞くので読話が使えず、前後の言葉や文章も聞けないので、識別は難しい。
普段、そこそこ会話が成立している場合も、それは聴力が良いのではなく虫食い状態の言葉を埋める想像力、類推力が高いので、言葉を「聞き取って」いるせいかもしれない。


人工内耳の適用基準が90dB以上で補聴器の効果がない場合とされている。
しかし、上記のように聴覚機能としての医学的な聴力は低い上に、語音識別検査の結果も低いので、人工内耳の「適応」となる。

今は90dB位なら補聴器の性能の向上もあり、補聴器と読話で「聞き取れて」いる難聴者は多いのではないか。

「補聴器の効果がない」というのは「補聴器だけの聞き取りの効果がない」ということだ。

そこで、長い間補聴器で「聞き取れてきた」難聴者は人工内耳をすべきかどうかの問題になる。

難聴の程度、オージオグラム、失聴原因と時期により、判断はまちまちだろうが、補聴器の限界があり加齢による聴力の低下や聞こえの環境の問題があれば、人工内耳の装用は積極的に考えても良いと思っている。

幾つもの条件がある。
1.本人の聞こえに対する意欲、忍耐力があること。
2.医師と言語聴覚士に補聴器と人工内耳の両方の知識と経験のあること。
3.補聴器と人工内耳の装用の訓練プログラムのあること。
4.日常的なカウンセリング体制がとれること。
5.補聴器装用技術者に補聴器のフィッティングの技術が保証されていること、人工内耳に理解があること。


ラビット 記