人工内耳で聞こえると新しい問題が。

人工内耳で少しずつ聞こえるようになると、今までの難聴者生活にない新しい問題に直面している。

勤務中、なんでそんなにきつい言い方をするのか、もう少しわかりやすく言ってくれないと分からないよ、なんか良いことがあったのかなとか、言葉を聞いてイライラしたり、真意をはかりかねることがしばしば感じるようになった。

今まで50数年間、音声のコミュニケーションは確実なものではなく、顔の表情や口の動きで補っていた。それが少しずつ聞こえることにより、音声の情報を言葉(オンの連なり)以外の声の調子、抑揚、言葉の間などがインプットされる。しかし、聞こえる人同士のコミュニケーションの間合い、音声のコミュニケーションの感覚というものが身についていないために、起こっているのだろう。

聞こえる人の物言い、つまり言葉の発し方、内容、タイミングなどがそれまでの難聴者としての生活では聞こえていなかったために、受け止めにくいのだ。

聞こえる人はその成長の過程でコミュニケーションの様式、音声コミュニケーションの形を自然に獲得している。
ネイティブの難聴者はそれがない。

難聴者のコミュニティのある難聴者は、難聴者としてのコミュニケーション様式を身につけている。こういう時は聞こえない、こういう言い方で話されたら分からない、曖昧な聞こえ方では文字で得る情報が確実だとか。
難聴者同士で話をする場合、聞こえる人との話ではコミュニケーションの取り方を変えている。
しかし、高齢難聴者などは、難聴者同士のコミュニティを持たない場合は聞こえる人とだけのコミュニケーションしかなく、苦労しているだろう。

ネイティブの難聴者も聞こえるようになるある段階で、人工内耳のリハビリテーションは、不必要な対人関係のコミュニケーションのトラブルをさけるために、コミュニケーションの取り方も学ぶ必要があるだろう。


ラビット 記