聴覚障害者に関わる著作権

2009年、著作権法は障害者の著作物アクセス拡大のために大きく改正された。

文化庁著作権のHPには以下のような説明がある。

障害者のための著作物利用に係る権利制限の範囲の拡大
 障害者のための著作物利用について,権利制限の範囲が,次のとおり拡大されました。(第37条第3項,第37条の2関係)
 ? 障害の種類を限定せず,視覚や聴覚による表現の認識に障害のある者を対象とすること

 ? デジタル録音図書の作成,映画や放送番組の字幕の付与,手話翻訳など,障害者が必要とする幅広い方式での複製等を可能とすること
 ? 障害者福祉に関する事業を行う者(政令で規定する予定)であれば,それらの作成を可能とすること
 ただし,著作権者又はその許諾を受けた者が,その障害者が必要とする方式の著作物を広く提供している場合には,権利制限の対象外となります。
文化庁 ホームページよりhttp://www.bunka.go.jp/chosakuken/21_houkaisei.html

しかし、聴覚障害者の映像著作物のアクセスについてはまだハードルが高い。
放送された番組の音声に対して、字幕と手話の制作とインターネット等で提供することは著作権の許諾が不要とされたが、その元になる映像の配信は認められていないとされている。

これは、放送された番組(著作物)字幕と手話を付けて配信できないということだ。これまで、緊急災害時の放送に字幕と手話を付けて配信することはリアルタイムの時だけ認められていたが、事後も可能になった。しかし、映像は送れない。

映像著作物には一般にDVDなどの記録系メディアと放送、インターネットで提供される。
聴覚障害者は今回の法改正で、聴覚により著作物の利用が困難なものとされ、対象者が大きく拡大されることとなった。
また、字幕制作事業者も福祉を対象とする事業者以外の公共図書館等にも拡大された。

これは、聴覚に支障があるものの著作物の利用を拡大するための措置だ。
しかし、肝心の著作物にアクセスする方策が非常に限定されたままなのは法改正の趣旨に反する。

著作権者は、映像著作物に字幕と手話の入ったものが2次利用されて、著作権者の利益が損なわれることを危惧しているのだろうか。私的利用以外に利用することは現行著作権法でも禁じられているのに、聴覚障害者に対する二重の法的規制が必要なのか。

放送と同時にマルチキャスト放送、IP放送が出来るように法改正され、著作権者の所在が分からない場合でも著作権を預かるようにまでされているが、著作物にアクセスすることが出来ない人々の権利はどうなるのか。


ラビット 記