全難聴、政見放送の字幕に関わる要望書を提出。

全難聴は、6月7日に政見放送の字幕に関わる要望書を総務省厚生労働省、NHKに提出した。

政見放送の字幕付与は、実は選挙制度だけの問題ではない。
大政党間の合意というものが、小選挙区制の政見放送にビデオ持ち込み方式が決められた際に結ばれているというのだ。

この「大政党間の合意」のために、総務省選挙部ですら、国会答弁で法改正には政党間での話し合いが必要といっているくらいだ。

隠された政党のエゴが私たちの参政権を奪っている。
3年も前から、自民党公明党にも、民主党にも打開を要望しているのに、政党の怠慢だ。


ラビット 記
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全難聴発第10-014号

                         2010年6月7日
総務大臣
原口 一博 様

社団法人
全日本難聴者・中途失聴者団体連合会
理 事 長     高岡 正

国政選挙に関わる要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。また、平素より私ども中途失聴・難聴者の福祉向上にご理解ご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
 当連合会は中途失聴・難聴当事者を代表する全国組織として、平成2年に厚生労働大臣の認可を受けた社団法人です。中途失聴・難聴当事者の権利擁護のためにさまざまな取り組みをしております。

 さて今夏予定の参議院議員選挙は7月11日が最有力といわれておりますが、国政選挙のたびに、聴覚障害者とりわけ中途失聴・難聴当事者の参政権保障については強い懸念があります。
 参議院議員比例代表区では、従来から候補者の演説に手話通訳を付けて放送しています。手話の必要な聴覚障害者のニーズを反映していただいたもので、高く評価したいと思います。

 わが国には65歳以上の高齢者が約2835万人おり、そのうち日常生活上支障をきたす程度の難聴者は1000万人を越えるとも言われております。その中には手話を全く理解できない人も大勢います。特に人生半ばで失聴した人は、学ばない限りは手話を理解することはできません。そのため、手話通訳付きの放送だけでは内容を理解することができません。

 国政選挙の政見放送においては、衆議院議員小選挙区で各政党が持ち込むビデオに字幕が付与されることが増えてきています。しかし、“字幕の付与”は政党の任意であるため、字幕付与のない持ち込みビデオもあります。また候補者の政見放送には字幕がありません。しかも参議院議員選挙には全く字幕がありません。政見放送の「字幕」がないと、音声情報を得にくい中途失聴・難聴者の参政権が保障されているとは言えません。

 障害者基本法第3条で「すべて障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会を与えられる」と、明確に政治に参加する権利をうたっています。
 中途失聴・難聴者も当然ながら国民の一人として、等しく候補者の政見等(発信される情報)を知る権利および国政選挙に立候補する権利があります。その権利の保障のために別紙の通り要望致します。
 中途失聴・難聴者に対する支援策充実について、一層のご高配を賜りますようお願い申し上げます。

国政選挙に関わる要望事項

1 中途失聴・難聴者が国民の一人として、平等に基本的人権である参政権を行使できるように、全ての政見放送に「字幕」及び「手話通訳」の付与を義務付けるよう法改正を実施して下さい。
 日本が2007年9月に署名し近々批准予定の、国連障害者権利条約の「第二十九条 政治的及び公的活動への参加」でも、他の者と平等に権利を享受することを保障するものとしています。一刻も早く全ての政見放送に手話・字幕が付けられるように、技術的対応を急ぐことを強く要望します。

2 政見放送のみならず、選挙期間中の街頭演説、個人演説会等にも「要約筆記」及び「手話通訳」等の情報保障手段の配置が無条件で可能なように、必要な法改正を実施して下さい。

3 中途失聴・難聴者はファックス・メール等が使えれば選挙活動ができます。しかし、それらの手段は「文書図画の頒布」と見なされ、選挙期間中は使えません。応援する候補者へ投票の依頼はできません。また、ファックス・メール等が使えなければ中途失聴・難聴者自身が候補者として立候補することは非常に困難です。選挙活動にファックス、メール等が利用可能なように必要な法改正を実施して下さい。

4 近年のIT利活用の進展により、インターネット利用の選挙活動が合意されようとしています。インターネット上で配信される動画等による政見発表をされるような場合、音声情報だけでは中途失聴・難聴者は話されている内容が理解できません。文字(字幕)表示及び手話表示を併せて付加することを義務付けるよう、必要な法律等を制定してください。

5 IT化の進展など、社会状況の変化に伴い、障害者の参政権行使に関する「研究会」を設けて下さい。その研究会には当事者の意見を反映させる必要があります。委員として当会も参画させて下さい。

以上