厚生労働省「第17回障がい者制度改革推進会議 総合福祉部会」 全社協ニュース

2.厚生労働省「第17回障がい者制度改革推進会議 総合福祉部会」が開催される

平成23年8月9日、「第17回障がい者制度改革推進会議 総合福祉部会」が開催され、①今回新たに提案された「障害者総合福祉法骨格提言素案」(「法の理念、目的、範囲」、「新法制定と実現への道程」等)、②7月26日に提案された内容の修正(「障害(者)の範囲」、「選択と決定(支給決定)」等)に関する議論が行われました。

障害者総合福祉法(仮称)骨格提言のとりまとめについて
全体の議論に入る前に、「障害者総合福祉法(仮称)骨格提言」のとりまとめに向けて、構成員より、「前回部会の中で指摘した内容が、今回提案された修正版では反映されていない。また、議論が十分なされていない項目も素案では盛り込まれている。素案とは異なる意見、少数意見については、どのような形で骨格提言に盛り込むのか。これらの意見を排除しない形でとりまとめていただきたい」という意見が出されました。これに対して、佐藤部会長は、「できるだけいろいろな意見を反映させる形でとりまとめていきたい」と回答しました。
これを受けて、構成員より「最後までまとまらない意見については、どのような形でとりまとめるのか。反対意見については記述しないのか」と再度意見が出されました。これに対して、佐藤部会長は、「部会での議論は、①障がい者総合福祉法(仮称)の実施以前に早急に対応を要する課題の整理(当面の課題)、②部会作業チーム報告・合同作業チーム報告(合本版)、③障害者総合福祉法(仮称)骨格提言としてとりまとめるが、それらすべてを平板に並べるわけではない。骨格提言は、新しい法律の方向性を示すものであるため、すべての意見を盛り込むことはできない」と回答しました。
今後、とりまとめに向けて、部会三役(佐藤部会長、茨木副部会長、尾上副部会長)で意見を反映させた内容の提案を行い、骨格提言は部会構成員の総意としてとりまとめる方向で作業を進めることが確認されました。
その他、①意見が異なる項目については部会で議論すべきである、②実施主体である市町村と意見交換を行う場を設けるべきである、③8月30日のとりまとめ期限を延ばすことはできないのか等の意見が出されました。

障害者総合福祉法(仮称)骨格提言素案(8月9日追加提案)に関する報告と議論
部会三役より、「障害者総合福祉法(仮称)骨格提言素案(8月9日追加提案)」が報告され、これに基づき、構成員による意見交換が行われました。

(1)「はじめに」
介護保険との関係については、法の対象に年齢を規定していないのだから、特記する必要はないのではないか。
介護保険との関係は利用者負担と連動する重要な課題であるため、「Ⅲ 関連する他の法律との関係」ではなく「はじめに」で提言すべき。
(2)「Ⅱ.新法制定と実現への道程」
○ 素案の中で提案されている「出身地自治体の財源保障」とあわせて、入所者の居住地特例についても議論する必要がある。
○ 出身地自治体が「一定年度」の財源負担を行うこととなっているが、なぜ「恒久的」ではないのか。
○ 出身地自治体が財源負担を行うことにより、地域移行を進めていくという効果は理解できるが、このことによって、一定の地域に集中することが生じかねない。
○ 初期段階では、入所していた施設の周辺の地域に集中する可能性はあるが、一定程度時間が経過すれば、解決するものと考える。
障害福祉予算をOECD諸国の平均水準以上にするためには、現在約1兆円の予算を約2兆円にする必要があるが、果たしてこれが現実的な提案なのか。現実的には不可能であろう。
(3)「Ⅲ.関連する他の法律や分野との関係」
① 医療
○ 「保護者制度は廃止し、これに代わる公的制度を確立すべきである」と提案されているが、これはすべての精神障害者に公的機関がかかわるということなのか。保護者制度の廃止には、賛成であるが、その代わりに公的機関が行うというものであれば、反対である。
○ すべての家族が保護者制度に否定的ではないので、単に「保護者制度の廃止」ではなく、家族が保護者としての役割を行いたいと考える場合の規定も同時に考えるべきである。
医療保護入院の同意については、保護者ではなく、公的機関が行えるようにすべきである。
○ 医療的ケアの実施にあたっては、安全なサービス提供が行われるよう、介護職員等が、医療関係者との連携の下に実施することを明確にすることが必要である。また、医療的ケアの「不特定多数の対象者」と「特定の対象者」の区別については、利用者の実態に応じて判断されるべきである。
○ 「精神科病床の削減と精神科特例」については、1つの項目として整理すべきである。
② 障害児
○ 「障害児入所施設」という表現は、「障害児入所支援」に改めていただきたい。
○ 通所支援の説明のところに、真の意味の「一元化」を目指すことが必要である、と書かれているが、入所支援についても、一元化の方向性であったと思うので、例えば、結論の中に、「一元化に向けながら」などと明記していただきたい。
○ 「障害者入所施設」の結論に、「…また障害児入所施設の小規模化、ユニット化を促進するため、加算措置をすること」とあるが、素案の「報酬構造の見直し、加算の整理と報酬改定」のところでは、「加算」を整理し、基本報酬に組み入れていくことが示されているので、そことの整合性を考えれば、「加算措置」は削除すべきであると考える。
○ 障害種別を越えた一元化については支持したいが、NICUから出たような重症児と重度の知的障害児を一緒に支援するということは現実的には不可能である。
○ 寄宿舎は、通学保障だけでなく、生活支援、子育て支援の役割も重要である。希望者が利用できるよう指導員の増員や施設整備の改善等、寄宿舎の強化をお願いしたい。
③労働と雇用
○ 賃金補填は雇用主に対する助成であるから、所得保障制度にからめてはならない、という意見があるが、就労チームでは、賃金補填について、雇用主への助成に限定して議論したわけではない。障害のある方の賃金水準の低さを改善するために、まず、業務確保や優先発注などが重要であるが、賃金補填についてもパイロット・スタディで実施できないかと考えた。
パイロット・スタディの実施に関して、対象を障害者等として、外国人や母子家庭なども意識した文言にするという意見があるが、賃金補填は制度設計によっては、誰に対する補助か分からなくなってしまう場合があるので、ここでは障害者に対する雇用政策に特化したいと考えている。
パイロット・スタディの実施に関する説明のところに、「③箕面市滋賀県など、地方公共団体独自の制度そして賃金補填を実施…」とあるが、滋賀県では賃金補填を目的にしたわけではなく、障害のある人もない人も平等に働くという共同の仕組みを目指した制度であるので、箕面市と並べて表記しないでいただきたい。パイロット・スタディで実施する多様な働き方には、福祉的就労のあり方を改め、障害のある人もない人も一緒に働くということも、盛り込んでいただきたい。
滋賀県箕面市では、制度上、若干違いはあるが、障害のある人の賃金に補填され得る要素があることが否定されているわけではない。
○ 「雇用施策の対象とする障害者に就業上必要な支援を認定する仕組み」のところで、説明には精神障害者についての明記があるが、実態として、自治体で精神障害者知的障害者を雇用しているところはほとんどない。そのような実態にメスを入れ、三障害が平等に雇用されるような提言にしていただきたい。
○ 賃金補填という名称が、適切かどうか疑問に感じる。
精神障害者の場合、国民年金、障害基礎年金の基準で、働けるか、働けないかというところがあり、就労について、年金の診断書の基準に密接に関わってくるので、他法との関係で検討していただきたい。

なお、「医療」、「障害児」、「労働と雇用」については、8月30日にとりまとめる「障害者総合福祉法(仮称)骨格提言」の中に、内容の一部を盛り込むが、今後、推進会議等でも引き続き、議論していくテーマであるとの方針が佐藤部会長より示されました。

④その他
○ 「障害者団体」という表現が使われているが、障害者団体に入っている障害者は少数である。幼児から高齢者まで誰もがもっと身近に「障害」を感じられるような啓発が必要である。
○ 今後、相談支援センターに権利擁護センターと虐待防止センター等が併置されるようになるかと思うが、事案が虐待防止センターや権利擁護センターにあがって、市町村にあがるという手間がかかることになるので、市が即対応できるような仕組みを考えた方がよいと思われる。
○ 権利擁護と差別禁止の問題は、障害者に限ったものではなく、外国人や女性、子どもなどすべてを網羅した条例にすべきものと思われる。
○ 「グループホームを一般住居として扱うこと」と記述されているが、このグループホームは、総合福祉法で提案している4〜5人を上限とする少人数のグループホームであると思われるので、その点現行のグループホームと誤解されないような記述にしたほうがよいと思われる。

障害者総合福祉法(仮称)骨格提言素案(7月26日修正提案)に関する報告と議論
 「第16回総合福祉部会」(7月26日)で提案された素案に、構成員からの意見を反映した「素案の修正版」が部会三役から報告され、これに基づき構成員による意見交換が行われました。
(1)「障害(者)の範囲」について
○ 障害者の定義の提案は納得できるが、すぐに国民に理解されるのは難しいだろう。身体・知的・精神の三障害を明記し、改正障害者基本法との整合性を図るべき。
(2)「選択と決定(支給決定)」について
○ 不服申立については、都道府県に、市区町村に対する是正勧告の権限をもたせるべき。
(3)「相談支援」について
○ 全体的に提案を見直すべき。このような重装備の体制に多額の財政出動をしなくとも、自宅を利用して自助・共助で行われている相談支援もある。国民が納得できる提案にすべき。
○ 現在の程度区分や認定審査会にかかる財源を振り分け、重層的な相談支援に充当することは重要。ピアサポートなども大切ではあるが、制度・システムの設計は必要。

(4)「支援(サービス)体系」および「10.地域移行」について
○ 地域移行の方向性は理解できるが、施設入所支援の役割は重要。「支援体系」に施設入所支援を明確に結論づけた上で、「地域移行」の項での記述を整理すべき。
○ 地域生活支援に財源を充てるべき。グループホームを作るなら、1人暮らしのためのアパートを造る方が大切。
○ 権利条約の求める地域生活の権利を重視すべき。施設入所支援は直近必要かもしれないが、総合福祉法の支援体系に位置づけることは、恒久的に入所施設を認めることになる。
○ 施設入所者の地域移行と精神科病院からの退院促進について成果が乏しい、不十分とまとめられたが、十分な成果はあげられていると考える。将来的にはない方が望ましいとされる中で一生懸命役割を果たしてきた入所施設を適切に評価すべき。

(5)「利用者負担」について
○ 利用者負担は無料が原則。高額な収入のある者に負担を求めることについては、あくまで一部に対してであることを明記すべき。
○ 24時間の介助が必要な障害者にとっては、支給量が増えることが何より重要。それを考えれば、利用者負担を無料にするのは、まだ先の話ではないか。

厚生労働省
第17回障がい者制度改革推進会議 総合福祉部会 資料
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/sougoufukusi/2011/08/0809-1.html
第17回障がい者制度改革推進会議 総合福祉部会 動画配信
http://www.youtube.com/watch?v=bnz-11YQYWw

障害福祉制度・施策関連情報)
平成23年度/7号(通算268号)(平成23年8月18日発行)