視覚障害者の「同行援護」事業の内容

視覚障害者の自立支援給付事業「同行援護」について説明してもらった。
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視覚障害者と情報支援」については、昨今音訳者の役割が増大しています。また、昨年10月から施行されている「同行援護」との関係からして、新しい制度の構築が必須です。

 いうまでもなく目が見えない見えにくい私たちの不自由は「移動」と「文字の読み書き」です。現行制度ではこうした社会に存在する「障害」はどのようにして克服されるというのか、厚生労働省に聞きたいところです。

移動支援事業が位置づけられている地域生活支援事業とは、いうまでもなく、相談支援事業、移動支援事業、コミュニケーション支援事業、日常生活用具給付等事業、地域活動支援センター事業の5事業は必須事業、それ以外は任意事業となっていますが、市町村が創意工夫をはかるとともに、利用者の状況に応じて柔軟に対応することが求められるものであり、地域間格差が生じる原因ともなりました。また、都市部と山村部では、生活環境に大きな差があるため、それぞれの実情にあった市町村ごとの創意工夫が必要となります。
社会福祉法人日本盲人会連合は、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会並びに社会福祉法人日本盲人社会福祉施設協議会とともに厚生労働省に対して、外出時における移動支援と情報処理ないしコミュニケーション支援は一体のものであり、そうした一体的支援を外出保障として全国一律に実施すべきであると訴えてきました。
平成21年(2009年)、厚生労働省補助事業として取り組んだ「視覚障害者に対する移動支援事業の効率的・効果的な実施のためのマニュアル作成検討事業」報告書では、「移動支援とは、広い意味での情報支援」であるとの結論を得ています。
また、地域生活支援事業としての「コミュニケーション支援事業」での代読代筆支援員の設置・派遣の要望は制度設計段階から、全国視覚障害者情報提供施設協会(全視情協)から強く要望されていたのですが、地域生活支援事業実施要綱(別記2)コミュニケーション支援事業で触れられているものの市町村での実施はほとんどない現状です。結果的には、視覚障碍者は「移動支援事業」、聴覚・言語機能障害者は「コミュニケーション支援事業」という壁を〈情報〉を切り口に使いやすい制度に再構築するまで具体化できませんでした。

以上のような流れの中での多くの視覚障害者の要望がついに実を結んだのが全国一律に実施される自立支援給付(障害福祉サービス)としての「重度視覚障害者に対する同行援護」でした。
ただし、これまで移動支援事業として実施されてきた重度視覚障害者に対する個別型の移動支援は、今後同行援護として全国一律に実施されることになるのであり、その結果として同行援護に含まれないサービスが地域生活
支援事業としての移動支援事業の形式で実施されることになります。
 私たちは、同行援護が視覚障害者の外出時の安全と社会参加を保障し、視覚障害者が同行援護を利用して外出時の情報処理ないしコミュニケーション支援を受けることにより、自らの自己実現を図ることができるようになることを大いに期待すものであり、その人材として音訳活動に従事している全国数千人の音訳活動従事者が、「移動支援」に伴う追加研修を受けることで、専門家としての役割が担えると厚生労働省には要望しています。
要望の先頭に立っているのが、読書権保障協議会です。

情報提供従事者である日盲社協や全国視覚障害者情報提供施設協会は「高度な専門性」として32時間の研修プログラムを提案しているところです。
しかし、この働きかけは、現在弱いものにすぎません。
指定事業者並びに本事業にかかわる市町村担当者は、同行援護が視覚障害者の外出時の安全と社会参加を保障する制度であって、視覚障害者が同行援護を利用して外出時の情報処理ないしコミュニケーション支援を受けることが新制度の重要な目的であることを十分に理解していただきたいと願うものです。