著作権セミナー(2008年11月26日)報告書 DINFへの掲載のお知らせ

日本障害者リハビリテーション協会が昨年11月26日に開催した「著作権セミナー」の報告書をDINFに掲載した。

http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/conf/081126seminar/index.html

聴覚障害者の著作権問題は、著作権法の改正に、障害者放送協議会著作権委員会が大きな役割を果たした。

国連の障害者権利条約の政府署名も受けて、幅広い改正が行われた。
聴覚障害者関係では、著作権法第37条と同第2項が改正された。
(1)法の対象とする聴覚障害者を、聴覚により著作物の利用な困難な人として、身体障害者福祉法聴覚障害者より幅広く対象にした。

(2)字幕制作事業者を社会福祉法人NPO法人に限らず、公共図書館も含めて幅広く設定している。

(3)聴覚障害者の利用に適した方法として、音声の文字化以外に、手話も付加出来るようになった。

(4)これまで放送された音声のリアルタイムの字幕制作だけでなく、DVDなどの著作物の字幕制作も許諾が不要となる。

(5)著作物の字幕データ、手話データをインターネットで聴覚障害者に配信することが認められた。

しかし、問題もある。
(1)字幕も手話も元の映像著作物と一緒にインターネットで配信することが認められていないこと。

(2)字幕制作事業者に著作物の補償金が求められること。
などだ。

全難聴など聴覚障害者関係団体は、文化庁著作権課と協議をしている。


ラビット 記

聴覚障害者に関わる著作権

2009年、著作権法は障害者の著作物アクセス拡大のために大きく改正された。

文化庁著作権のHPには以下のような説明がある。

障害者のための著作物利用に係る権利制限の範囲の拡大
 障害者のための著作物利用について,権利制限の範囲が,次のとおり拡大されました。(第37条第3項,第37条の2関係)
 ? 障害の種類を限定せず,視覚や聴覚による表現の認識に障害のある者を対象とすること

 ? デジタル録音図書の作成,映画や放送番組の字幕の付与,手話翻訳など,障害者が必要とする幅広い方式での複製等を可能とすること
 ? 障害者福祉に関する事業を行う者(政令で規定する予定)であれば,それらの作成を可能とすること
 ただし,著作権者又はその許諾を受けた者が,その障害者が必要とする方式の著作物を広く提供している場合には,権利制限の対象外となります。
文化庁 ホームページよりhttp://www.bunka.go.jp/chosakuken/21_houkaisei.html

しかし、聴覚障害者の映像著作物のアクセスについてはまだハードルが高い。
放送された番組の音声に対して、字幕と手話の制作とインターネット等で提供することは著作権の許諾が不要とされたが、その元になる映像の配信は認められていないとされている。

これは、放送された番組(著作物)字幕と手話を付けて配信できないということだ。これまで、緊急災害時の放送に字幕と手話を付けて配信することはリアルタイムの時だけ認められていたが、事後も可能になった。しかし、映像は送れない。

映像著作物には一般にDVDなどの記録系メディアと放送、インターネットで提供される。
聴覚障害者は今回の法改正で、聴覚により著作物の利用が困難なものとされ、対象者が大きく拡大されることとなった。
また、字幕制作事業者も福祉を対象とする事業者以外の公共図書館等にも拡大された。

これは、聴覚に支障があるものの著作物の利用を拡大するための措置だ。
しかし、肝心の著作物にアクセスする方策が非常に限定されたままなのは法改正の趣旨に反する。

著作権者は、映像著作物に字幕と手話の入ったものが2次利用されて、著作権者の利益が損なわれることを危惧しているのだろうか。私的利用以外に利用することは現行著作権法でも禁じられているのに、聴覚障害者に対する二重の法的規制が必要なのか。

放送と同時にマルチキャスト放送、IP放送が出来るように法改正され、著作権者の所在が分からない場合でも著作権を預かるようにまでされているが、著作物にアクセスすることが出来ない人々の権利はどうなるのか。


ラビット 記

地上デジタル放送の字幕とアナログ放送の字幕

地上デジタル放送の全面移行を控えて、テレビでも「地デジカ」や「草薙クン」がCMの多く流れている。
しかし、CMには字幕もテロップもないので難聴者には訴求力が弱い。人口の十分の一を占める難聴者に対する配慮はないのだろうか。しかもその大多数は高齢者だ。

地上デジタル放送の受信には、デジタルテレビに買い換える、地上デジタル放送チューナーを購入する、ケーブルテレビに加入するなどの案があるが、とりあえず字幕放送が見られれば良いなら地上デジタル放送チューナーが選択肢にはいる。家の2台目、3台目のテレビはデジタルテレビに買い換える余裕がない場合、も地上デジタル放送チューナーを付ければよい。

デジタル放送とアナログ放送の字幕放送の字幕の見え方はかなり違う。

アナログ放送は10年以上も前のSONYの21型テレビ。デジタル放送は2007年製の日立の32型の字幕だ。

明らかに画質も字幕もデジタルの方が見やすい。

上が、アナログテレビでアナログ放送の字幕
下が、デジタルテレビでデジタル放送の字幕

ラビット 記



地上デジタル放送チューナーの字幕とデジタルテレビの字幕

地上デジタル放送チューナーは大型電気店に行っても目に付きにくいところにありディスプレイもただモック(模型)がおいてあるだけというくらい貧弱だ。

それは、売り上げを伸ばしたいメーカー、電気店にとっては当然のことかもしれないが、デジタルテレビを購入できない所帯、2台目、3台目のテレビがある所帯のためにきちんと選択肢を示すべきだ。

字幕放送が見られるかどうかが購入の鍵だが、地上デジタル放送チューナーをつけたアナログテレビはアナログテレビだけより画質も字幕もきれいに見える。


上が、デジタル放送で見るデジタル放送の字幕
下が、地上波デジタル放送チューナーを付けたアナログテレビのデジタル放送の字幕



ラビット 記





長妻厚労相の障害者自立支援法廃止発言と障害者施策

9月19日、長妻厚労大臣は、障害者自立支援法廃止を言明した。
このことは、障害者自立支援法の応益負担に反対し、障害者自立支援法の廃止を求める1万人の大集会を5年間成功させてきた障害者団体の運動の結果だ。

もとより、普通に人として生きるための支援サービスに負担を求めれば、多くの支援サービスを利用する重度の障害者ほど負担が多くなる。いかに軽減措置を取ろうとも、障害があるが故に負担を求める制度の本質的な矛盾は変わらない。
ゆえに、今も各地で障害者が障害者自立支援法違憲訴訟を起こしている。

今後、連立与党の合意に基づき、支援法をどのようにして廃止していくのか、変わるべき法律はどのような内容を持つべきか検討される。

この時、「障害」の定義を明確にし、障害者の「自立」の考え方をしっかり確立すること、障害者当事者の意見を十分取り入れたものとすることを強く求めたい。

新しい障害者総合福祉法は各分野の障害者の権利を守る諸法と併せて、障害者権利条約の批准の基礎にもなるだろう。


ラビット 記