難聴者支援の施策(1)

難聴者を社会が支援する施策が必要なことは論を待たないが、問題は誰がそれを戦略として建てるかだ。

難聴者問題は、治療に関わる医療施策、難聴者に対する相談や機器の給付、通訳の派遣などの障害者福祉施策もあれば、放送と通信、交通、建築物のバリアフリー、難聴児・者の教育の保障や地域での理解の促進など広範囲にわたっている。

高齢者が2400万人もいれば数百万人単位であるいは1千万人を越えるだろう難聴者が存在する。団塊の世代が定年を迎えると言われているが、その中には多くの難聴者が含まれ、就労している人も社会の各分野で活発に活動しようとしている人もいる。
これだけの特定のニーズを持つ集団がいるのだから医療や補聴理論などを越えた難聴学や難聴社会学があっても良い。日本経済に及ぼす影響を論じる難聴経済論だのさらに難聴者文化論、難聴者向け難聴者サウンズだって生まれても良いくらいだ。

にも関わらず、難聴者問題に陽が当たらないのは、難聴が、「聞え」の障害だからだ。感覚の障害としか受け止められないのは挟小にすぎるが、実際にその聞えを説明するのはむずかしい。味覚は辛い、苦い、甘い、塩辛い、しょっぱいなどの共通の言葉があるが聞こえにはないからだ。

nancy&anyコミュニケーションの障害とは言うがもっと掘り下げて、対人コミュニケーションと環境とのコミュニケーション、難聴者のコミュニケーションの内的作用も探求が必要だ。


ラビット 記


写真)ニューヨークにある難聴者のためのリーグのナンシー・ナドラー博士(右)とアミー・K・ボイル博士