異動は難聴者の心配の種

人事異動の季節だ。どの企業でも組織でも定期的に異動がある。
難聴者にとっては、新しい仕事が出来るかどうかより、また人間関係をどう築き上げるか頭痛の種だ。同じ部課の範囲、あるいはいつも挨拶くらいはしている支店内の異動なら良いが、全く違う支店や部課に異動すると自分が聞えないこと、どういうコミュニケーションをしているかを説明しなければならない。

8年前は、自分にして欲しいコミュニケーション方法を紙にまとめて上司に渡したら、社長も含めて社内回覧されてしまった。
1)顔を見て話して下さい。
 一所懸命にパソコンを打ち込んでいると、画面とキーボードの間に顔が割り込んできてびっくりした。
2)呼ぶ時は、肩を叩いて下さい。
 最初に思いきり叩かれてびっくりした。痛かったが我慢して、何?
と聞き返した。
3)数字は、指で表して下さい。
 1、2,3・・は良いが、9は両手で5と4を重ねるのできつそうだったが、そのうち空中に書く(空書)ようになった。
4)静かなところで話して下さい。
 課内ミーティングも小会議室などを使って開くようになった。私は皆の顔が見えるように普通は上司の座る部屋の正面に座るようになった。
今の上司は、ちょっと話しかける時も別室に呼ぶ。叱責されるのかと思うとホワイトボードを使って「図解」入りで話してくれる。すごいくせ字で判読しにくいが言えない。
5)要件は紙に書いて下さい。
 手にマヒのある同僚も金釘流の字だがメモを書いてくれる。今は社内メールがあるが隣にいる女子社員に今部長はなんて言ったのなんて聞くと「あのねえ○○らしいよ」とうわさも教えてくれる。

前に、私に口を大きくあけて話してくれる女子社員がいたが異動してしまい、困ったなと思ったら、その後の方も丁寧に話してくれる。どうやら「引き継ぎ書」に私とのコミュニケーション方法が書いてあるらしい。それが今も代々伝わっている。

ラビット 記