市町村の要約筆記事業

060321_1639〜001.jpg要約筆記事業が奉仕員事業から要約筆記者事業になるが、この意味を市町村の障害者福祉行政担当者はまだほとんど知らない。

市町村の要約筆記者派遣事業だが、奉仕員から要約筆記者に転換しなければならない。
二つの大きな問題がある。
ひとつは要約筆記者の質をどう確保するかだ。
厚生労働省の養成カリキュラムの基礎課程32時間、応用課程20時間の要約筆記奉仕員カリキュラムで養成している市町村はどのくらいあるだろうか。
市町村だからそこそこで良いということにはならない。これまでは、要約筆記奉仕員が要約筆記と難聴者の支援、お世話もしていたかもしれない。しかし無権利状態の中途失聴・難聴者を支援するにはすぐれた人権感覚と技術が必要になる。中途失聴・難聴者の支援の専門性とは異なる。
都道府県に、コミュニケーション支援事業の担い手の養成問題をしっかり要望する必要がある。

二つめは、コーディネーターの問題だ。
最初の問題と関係するが、要約筆記者は派遣事業体の元でコミュニケーション支援の役割を果たす。
先日T県で聞いた話だが、山奥には工芸で身を立てているろうあ者があちこちにいるが、手話通訳の派遣制度があることも知らないでいるという。そういうろうあ者がたまたま仲間のろうあ者から聞いて、手話通訳の派遣を頼むようになった。
このろうあ者への支援はコミュニケーション支援にとどまらず、様々な支援が必要になる。この時他のサービス従事者と手話通訳はそれぞれの事業体が協同しての一番良い支援を行うことになる。

同じように、要約筆記もその場のコミュニケーション支援だけではなく、その聴覚障害者の自立のために、何が必要かを見極めて、派遣元に報告する必要がある。派遣元は、対象者にあわせて、要約筆記者の派遣だけではなく、他の関係機関と連携して、適切な支援をコーディネートする必要がある。
これが派遣事業のコーディネートの専門性だ。
これまでに発表された実施要項で、市町村でコーディネートの体制に留意することとあるのはこういう意味だ。市町村が適切に出来ない場合は、都道府県の事業になる。実際の派遣業務は市町村と都道府県の連携も必要になるかどういうモデルを作るかが次の課題だ。

都道府県のみならず市町村の養成された要約筆記者の転換の意味は軽くない。


ラビット 記