難聴者の孤立のメカニズム(2)

060414_0818〜001.jpg出張先は小さな事業所であり、そこの業務の一部を引き受けることになってそのための打ち合わせである。
打ち合わせ場所は休憩室のような狭いスペースで声が反響して聞きにくい。打ち合わせの始まる前の雑談を聞いていたが補聴器のみではやはり聞きにくい。おもむろにかばんから、補聴システムを取り出して接続した。
部屋の反響音がやや抑えられるが、指向性マイクは万能ではない。いろいろな角度から話されるとマイクの向いていない声の明瞭度は落ちる。
打ち合わせでは時間や回数を聞いたが、やはり聞取りは難しい。二種類目の聞取り用紙を配布してあったので、先方に直接記入してもらった。

ひととおり打ち合わせたところで、隣の上司に他に何かないか聞かれた。隣はマイクを向けていないので聞こえなかったので、何度もこちらの問題か先方の問題かを確認した。勤務先ではこの上司についで数人しかいないくらい古い顔になっているので少し位は聞こえなくても厚かましく聞き返せるが、若かったら大変厳しいだろう

会議後は、先方の所長が上司に雑談を持ちかけたが、内容がわからない。日焼けした方なので多分ゴルフの話だろうと想像していたら、上司が「町内野球をしています」という。それで先ほどの話は「良い顔色してますね。何かスポーツをしているのでしょう。」だったのだろうと思われる。難聴者が会話に加わるには想像力が求められる。
雑談は相手と共通項を持つために持ち出されるのだろうが、ここで仮に自分が野球をしていたとしてもそのことを言ったかはわからない。言えば、どのくらいやっているかとかポジションはどこかと聞かれる。答えられればよいが、経験的には話さない方が良いという判断だ。
かくして難聴者は沈黙するしかない。人と深い交わりが持てないフラストレーションをため込むことになる。

ラビット 記