中途失聴・難聴者運動と要約筆記事業


朝顔1F市の要約筆記奉仕員養成講習会で、「中途失聴・難聴者運動」について、講義した。

1965年に鹿児島県でわが国最初の難聴者協会が出来たとか、1972年に全国難聴者連絡協議会が結成され、翌年に第一回の全国難聴者福祉大会が名古屋で開催されたとか、難聴者運動の歴史を年号順に述べることはできる。要約筆記もいつ始まったとか述べることは出来る。
しかし、今語られなければならないのは、難聴者協会がなぜ鹿児島県で始まったのか、その後どうして続かなかったのか、中途失聴・難聴者の運動が要約筆記とどう結びついていたのかということだ。

難聴者の組織運動は、コミュニケーションの確保が不可欠だ。難聴者、中途失聴者を発展させたのは、要約筆記と磁気ループだ。この二つがあって始めて、集団的討議を可能として、構成員の意見が交換でき、組織の原動力となったのだ。
磁気ループは、補聴器の一定の普及が必要であり、要約筆記は、オーバーヘッドプロジェクターOHPの登場が必要だった。これらの機器の出現前は、コミュニケーションといっても筆談や黒板の板書をするか大声で話していたり、非常な苦労をして最初の組織化が行われたことは想像に固くない。
要約筆記は、集団的討議のニーズによって、誕生したということを強調した。

現在の中途失聴・難聴者運動は大きな転換を迎えている。いうまでもなく、障害者自立支援法で要約筆記事業が法律によって初めて義務つけられたからだ。
法律ですべての自治体に義務つけられたということは公益性があり、かつ聴覚障害者の権利の擁護のサービスとして実施されるということだ。
今後は、この権利擁護の要約筆記者派遣事業を同発展させるか、要約筆記者を養成するかが喫緊の課題となっている。

ラビット 記