H市の要約筆記者派遣事業

H市は、これまで市から委託を受けた障害者センターを運営する社会福祉法人が要約筆記奉仕員の養成事業を行い、社協のボランティアセンターが派遣事業を行っていた。
H市の難聴者友の会が長い間、要約筆記奉仕員養成講習会に係っていたことから、要約筆記者養成事業が都道府県の事業になることに抵抗を感じていたようだが、繰り返し話し合う中で、要約筆記者派遣事業が市の事業で行われること、要約筆記者が通訳としての専門性を持って養成されること、要約筆記者にボランティア、友の会の支援を求めるのではなく、多くの要約筆記サークルに求めるべきこと等が理解されて来た。
H市は、要約筆記奉仕員の養成を続ける一方、要約筆記者派遣事業は自立支援センターとの契約をする意向を出して来た。
H市が要約筆記奉仕員の役割をどう見ているか問題があるが、講習会の内容は変えられるので、予算の確保が先と考える。

要約筆記奉仕員養成事業を継続するH市のようなケースは増えると思われる。この奉仕員養成講習会を厚生労働省カリキュラムで養成していくか、新しい難聴者問題を幅広く考え、社会のあちこちで活動する人を「養成」するか、方向を示さなくてはならない。
H市の障害者福祉センターは、中途失聴・難聴者のための手話講習会やコミュニケーション講座を開催したり、中途障害者の問題に力を入れて来た。
難聴者は1千万人近くあるいはそれ以上いると見ている。県によっては高齢化が非常に進展して、街のコミュニティはお年寄中心というのも珍しくない。
これらの大多数の難聴者は補聴器等を使っていない。補聴器の年間販売台数が40数万台レベルなので、補聴器を使っている人は100万人から多くて200万人の間だろう。こうした多くの難聴者に対して、補聴器の装用の推進、補聴援助システムの普及、公共施設の聞こえの環境整備などは社会的問題だ。しかし、これを普及するための人がおらず社会に取り組む仕組みがない。

難聴者にとって、日常生活の中で常に要約筆記者等が派遣される訳ではないので、補聴器等で聞こえを補ったり、音環境のバリアフリーが必要である。
要約筆記はいろいろあるコミュニケーション手段の一つであり、要約筆記者から見ればコミュニケーションを支援する方法だ。手話は手話サークルの人々が中心になって、ろう者と交流し、地域にあるいは職場でも理解を広め、手話も広めている。
要約筆記サークルの方々には、支援法の地域生活支援事業で市町村が提供する公的なコミュニケーション支援事業の担い手、要約筆記者として活動していただくこと、一方で難聴者の抱える幅広い問題の一番の理解者として、活動していただきたい。

ラビット 記