聴覚障害者の就労問題(2)

4月2日に厚生労働省の「障害者権利条約と障害者雇用就労問題」の研究会が行われているが、「合理的配慮」をどう取り扱うかが焦点になっている。


障害者権利条約に「合理的配慮」をしないことは差別にあたると明記されており(第2条)、雇用、就労のあらゆる形態の募集から採用、就労の継続など全ての段階での差別の禁止、「合理的配慮」の提供の確保、障害者の苦情の救済措置などか規定されている(第27条)。

研究会の報告資料には「合理的配慮」を我が国の障害者雇用就労施策にない新しい概念としているが、憲法にも生存権自由権社会権などが規定されており、障害者基本法にも規定されている。
まったく新しい概念とはどういうことなのか。
権利を具体的に担保する措置の実施が法改正してでも求められているからか。

聴覚障害者就労問題の解決のための課題は、
1)障害者権利条約の理解が重要
あれこれの条項だけ取り出して理解するのではなく、条約の成立過程も含めた理解が重要だ
2)雇用・就労の聴覚障害者の権利とは何かをしっかり検討することだ。
聴覚障害者は何を「差別」というのか。就労前に十分な教育や訓練を受ける機会がないことも含めるのか、職場のインフォーマルなコミュニケーションはどうするのか、障害者枠の採用は合法か、雇用側の過度の負担をどこまで認めるのか、検討すべきことは多い。
3)「合理的配慮」に何を求めるのか。
コミュニケーション支援の義務付けは当然だがその内容は誰がきめるのか。
中途失聴・難聴者を含めて聴覚障害者の就労問題は通訳をつければ終わりではない。聴覚障害者への助言、相談支援、職場へのコンサルテーションが必要だ。
これの
「合理的配慮」の義務は雇用側だけでは対応出来ない。国や自治体の責任が生じる。
4)上記のコミュニケーション支援とそれ以外の支援の仕組みを検討する必要がある。
ジョブコーチ以外に多様な方法が開発されるべきだ。

雇用側に働くことが基本的人権である意識がないと「過剰な負担」だけがクローズアップされる懸念がある。
障害者の就労は社会に長い目で見れば大きな生産価値を産み出すし、新たな雇用の需要も産み出す。

ラビット 記