放送アクセシビリティと「合理的配慮」

12月21日のCS障害者放送統一機構設立10周年記念「シンポジウム」で、障害者権利条約と放送アクセスが大きな焦点になった。

実は、放送アクセス保障は、障害者権利条約第2条の定義で言う「ユニバーサルデザイン」の問題だ。
社会のインフラとして、視聴覚障害者などすべての障害者に放送のアクセスが保障されなくてはならない。

障害者権利条約の「合理的配慮」は何に当たるのだろうか。
合理的配慮とは、障害者権利条約第2条の定義にあるように「特定の場合に必要とされるものである」。これは、JDFのフォーラムで、ティナ・ミンコウィッツ(世界精神医療ユーザー・サバイバーネットワーク(WNUSP)共同議長/弁護士)さんが強調されていた。
つまり、障害者の個別具体的な事案ごとに配慮するためのものだ。
http://www.nivr.jeed.or.jp/download/houkoku/houkoku87_03.pdf
38ページ参照

字幕放送が聴覚障害者が放送にアクセスするためのユニバーサルデザインとしたら、テレビ受信機も字幕放送回路を内蔵したユニバーサルデザインでなければならない。
手話放送はほとんど実施されていないが、これは手話を言語とするろう者にとって、障害者権利条約の第9条情報アクセスにも、第30条の文化的アクセスにももとることになる。
手話放送の字幕放送に当たるクローズドサインニングが
地上デジタル放送の規格上、あるいはテレビ受信機の構造的な問題で実施できないならば、それの実施は放送事業者にとって「過度な負担」に当たるかも知れない。

しかし、「目で聴くテレビ」がPIP機能で手話放送を実施していて、テレビ放送の視聴者であるろう者が放送事業者に対して、合理的配慮として手話放送の実施を求めた場合、現実に手話放送を個別的に実施しているサービスがある以上、放送事業者は合理的配慮をせねばならないのではないか。
このことは、サービス提供事業者が1時間の放送コストとして10万円を請求したとしても、それは1時間の放送に数千万円以上
のコストをかけている放送事業者にとって、過度な負担とは言えず、放送事業者は実施しなければ差別に当たるのではないか。

放送事業者が聴覚障害者と真摯に解決策を検討しなければ、BPOに訴えたり、放送の消費者として消費者庁に問題を持ち込むことも出来る。民放のスポンサー団体である広告主協会、電波産業会ARIBも真剣に対応を求める。

シンポジウムでは、下級審では障害者権利条約も法的根拠になるという指摘もあった。


ラビット 記