要約筆記事業が市町村の義務的事業になった意味。

これは国と地方公共団体は人権を守る責務があり、人権を守る事業を公費で行わなければならない。
つまり要約筆記者派遣事業が人権を守るための事業ということだ。

派遣されるのは、要約筆記「者」としての派遣事業であり、要約筆記奉仕員ではない。


必須事業がどのように行われるべきか、障害者自立支援法が障害者 が地域で人権を保障された生活を送るための事業のあり方、給付の方法を示した法律である。

なぜ地域か。これは、社会福祉基礎構造改革で打ち出された社会福祉法でも「地域福祉」がそれまでの高齢者、女性、児童、障害者と縦割りのサービスではなく、地域で統合されて提供されるべきという考えがある。

私たち難聴者、中途失聴者が地域を意識することが少ないのは、コミュニケーションの障害のために地域との交わりが阻害されていること、地域との関わりを避けて来たことが要因だ。
難聴という障害は自分でも周囲にも重い障害と見られずに、自覚的に社会と関係を持つことが難しい。さらに、難聴者自助組織に加わるにも、地域的に集まったりすることが出来ない地理的な問題、体力的な問題、家庭環境等の問題があると難しい。

要約筆記事業(要約筆記者は検)が地域生活支援事業で実施されるという意味は、大きく分けて二つある。
一つは、これまで難聴者自助組織に結集していない難聴者、中途失聴者を支援するためである。
膨大な難聴者を支援するには地域社会の社会資源が難聴問題を理解し、多面的に関わる必要があるからだ。

もう一つは、難聴者であっても社会との関係性は地域から始まるということだ。これは、人のライフステージを見ても地域が基盤である。就労・就学しているかに関わらずどういう生活を送るかはどこに住むかから始まる。

防犯・防災は言うに及ばず、各種手続きも選挙も地域で行われる。
高齢者施設に入所していようと、域外の学校に通っていようと各種の行政サービスは住居のある市町村で提供される。

地域の中で、難聴問題が理解され、住民としての生活、自立した市民としての活動が保障されるには、地域で要約筆記者派遣事業が確立されなければ成らない。

問題は、この権利擁護の事業である要約筆記者を養成する仕組みが出来ていないことと約半数の市町村で要約筆記者を派遣※する事業が始まっていないことである。

※専門性のある要約筆記者の養成事業は都道府県事業


ラビット 記