聴覚障害者制度改革推進中央本部、各政党に公開質問状発信

聴覚障害者制度改革推進中央本部が参議院選挙に際し、各政党に公開質問状を発信した。

ラビット 記
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2010年6月24日
政党名
代表    様
 聴覚障害者制度改革推進中央本部
      本部長 石野 富志三郎

障害者福祉施策に関する公開質問状

 貴党におかれましては、日頃より聴覚障害者の福祉向上にご尽力を賜り厚く御礼申し上げます。
 私たち「聴覚障害者制度改革推進中央本部」は、聴覚障害当事者団体とその支援団体の6団体によって構成し、聴覚障害者に係わる障害者施策をより良いものにするべく活動しております。特に、障害者権利条約の採択における「私たち抜きに私たちのことを決めないで!」とする理念をもとに、障害者施策に直接参画できる体制の確立、聴覚障害者においては、言語としての手話普及、コミュニケーションの権利保障、情報アクセス保障等を実現するための法整備を求めているところです。
 さて、本年1月に閣議決定により内閣府に設置された「障がい者制度改革推進会議」、及び、その下に設けられた「総合福祉部会」において、障害者権利条約の批准を踏まえ、障害者自立支援法にかわる「障がい者総合福祉法(仮称)」の検討が進められているところです。しかし、この最中にもかかわらず、障害当事者に何の説明・情報提供もなく、唐突に障害者自立支援法一部改正案が国会に上程されたことにより、全国的な反対運動が展開されました。
このように、私たち障害当事者やその家族、支援者等の関係者は、今回の参議院議員通常選挙における各政党の障害者福祉施策について非常に大きな関心を持っています。
つきましては、皆様の見解を広く関係者に知らしめるため、お忙しい時に大変恐縮に存じますが、別紙の質問・回答用紙に貴党のお考えをご記入の上、7月1日(木)までに   FAX(03−3267−3445)にてご回答くださいますようお願いいたします。
 
聴覚障害者制度改革推進中央本部≫
構成団体  財団法人全日本ろうあ連盟
社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会
社会福祉法人全国盲ろう者協会
全国手話通訳問題研究会
一般社団法人日本手話通訳士協会
特定非営利活動法人全国要約筆記問題研究会

≪連絡先≫
〒162-0801 東京都新宿区山吹町130 SKビル8階
財団法人全日本ろうあ連盟気付
聴覚障害者制度改革推進中央本部
Tel 03-3268-8847・Fax 03-3267-3445

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財団法人全日本ろうあ連盟宛 FAX:03−3267−3445

質問事項・回答
政党名:               

1. 国連で採択された「障害者権利条約」の批准にあたっては、国内法に広く適用されることが必要と思います。
  障害者権利条約の批准にむけて、貴党はどのようなご見解をお持ちですか。 

2 障害者自立支援法の改正について
  障害者福祉は利用者負担なしで、広く社会で負担する(全額税負担で行う)べきだと思います。
  このたび衆議院で可決され、参議院で廃案となった障害者自立支援法一部改正案では、応益負担は縮小されましたが、原則としての応益負担は残されたままであり、また地域間格差や不十分な予算措置等の問題があるコミュニケーション支援事業(地域生活支援事業)は手つかずのままです。
  また、同改正案が、障害者自立支援法にかわる新法を検討している障がい者制度改革推進会議に、まったく事前に知らされないままに提案されたことも大きな問題と考えます。
  このたびの障害者自立支援法一部改正案の内容や上程の経緯について、貴党はどのようなご見解をお持ちですか。

3 コミュニケーション支援事業について
 現在の障害者自立支援法で定めるコミュニケーション支援事業(地域生活支援事業)は、不十分な予算措置のまま市町村必須事業となったために、
1)必須事業であるにもかかわらず未実施市町村が多数存在する、
2)実施市町村においてもボランティアによる手話通訳者/要約筆記者派遣事業が中心であり、聴覚障害者の地域生活を支える専門性に乏しい市町村が多い、
3)そのボランティアでさえ、必要な養成事業が実施されていない市町村が多く人材確保が進まない、
4)市町村域や県域を超えた聴覚障害者の移動に対応できるしくみが法律上ないために、居住地以外の市町村での活動に対する情報とコミュニケーション保障が受けられない、
等の多くの問題点があります。コミュニケーション支援事業のこのような問題点について、貴党はどのようなご見解をお持ちですか。

4 政見放送への手話通訳、字幕の挿入の義務化について
 現在は、公職選挙法により、参議院及び衆議院比例代表区政見放送以外は政見放送に手話通訳も字幕もつけることができません。また、手話通訳の付加は政党の判断で行われるため付加しない政党もあります。参議院選挙区や衆議院小選挙区の選挙、地方自治体の選挙については制度改革の見通しがありません。
 国民でありながら候補者を選ぶ権利を行使するための情報の入手を制限されている状況を、貴党はどのようにお考えか、見解をお聞かせ下さい。
 
5 このたびの参議院議員通常選挙での情報保障対応について
 このたびの参議院議員通常選挙において、政見放送、個人演説会など貴党の政見を訴える場面において、手話通訳、字幕、要約筆記等の聴覚障害者に対する情報保障を実施されますか?

6 障害当時者の政策立案過程への参画について
 現在の「障がい者制度改革推進会議」のメンバーは、半数以上が障害者当事者やその関係者という構成で論議が進められています。
 同様に、現在の障害者福祉制度の中で定められた障害者計画や障害福祉計画などの地域での障害者福祉政策立案過程において、障害当事者の意見の反映のために、半数以上のメンバーを障害当事者またはその関係者が選出されることが必要と考えます。
 今後の、国及び地方における障害者関係の政策立案過程において、たとえば障害福祉計画策定にあたっての当事者参画が、厚生労働省からの通知があるにもかかわらず進まない現状を踏まえ、障害者の参画を保障する制度作りについて、貴党はどのようにお考えか、見解をお聞かせください。

7 これからの障害者福祉制度について
 現在、国は、障がい者制度改革推進本部を設けて、障害者自立支援法の廃止を前提として、同法に代わる新法の策定、障害者権利条約の批准に向けて取り組んでいます。
 この取り組みは、障害当事者の参加、会議の全面公開、現行福祉制度の根本から障害者の立場に立った見直しの推進など多くの点で画期的な取り組みと考えます。
 現行の障害者自立支援法の廃止と、現在国において進められている新たな障害者福祉にかかる法制度作りについて、貴党はどのようにお考えか、見解をお聞かせください。
 
8 障害者差別禁止法について
現在、障がい者制度改革推進会議において、障害者差別禁止法の制定についても論議されています。差別禁止法をつくるときに重要なことは障害者の定義、範囲であり、障害を理由とする差別の定義です。聴覚障害者においては、手話を言語として位置づけ、本人の求める言語・
コミュニケーションを保障されないことは差別であると考えます。このことについて貴党のご見解をお聞かせください。

9 情報・コミュニケーションを保障する法律・制度の必要性について
 聴覚障害者の情報・コミュニケーション保障が進まない現状を踏まえ、聴覚障害者のみならず全国民のメリットとなる情報・コミュニケーション保障を定めた法律が必要であると考えます。現在の聴覚障害者の情報へのアクセスやコミュニケーションを保障する制度は、聴覚障害者の生命や社会参加を保障するという重要性にも関わらず、現実にはボランティアによって支えられているという状況を踏まえ、情報へのアクセスやコミュニケーションを保障する法律について、貴党はどのようにお考えか、見解をお聞かせください。

10 聴覚障害者の就労について
 聴覚障害者の就労については、障害者雇用促進法により一定の雇用が確保されているところですが、非正規雇用(臨時社員、契約社員、パート)が多く、十分な所得保障がなされていない実情があります。
また、現行制度では重度障害者は障害者二人とカウントされ、障害者の就労者数を押し下げてしまっています。
 障害者の就労にあたり、障害に見あう労働の保障と所得保障について、貴党のご見解をお聞かせください。

11  その他
 障害者施策について、貴党が特に取り組みたいとされていることをご自由にお書きください。

ご協力ありがとうございました。