すべての都道府県と市町村で要約筆記事業を(4)

昨日、京都嵯峨野で聴覚障害者医療従事者の会の集まりがあった。
障害者自立支援法と医療における要約筆記者の問題について考えた。

要約筆記者は、その場のコミュニケーション保障を担うだけではなく、同時に難聴者の立場で不利益がないように、対応を考える。例えば、通訳している医療現場で難聴者が医者の言うことが良く理解できないまま返事してしまうとか、難聴者が経済的な問題を抱えているとかの場合、要約筆記者からの報告を受けた派遣事業体のコーディネーターが医療機関やメディカル・ソーシャルワーカーなり福祉事務所と相談するという対応をする。これがコーディネーターの役割の一つ。

要約筆記者は、通訳としての専門性とモラルを持つことで、医療の現場にも入れるようになる。以前大阪で開催された要約筆記討論集会で、京都の参加者から難聴者が診療を受ける時呼び出しまでは要約筆記者が同行するが診療の場には入れてもらえなかった、これで難聴者の医療が保障されるのかという問いかけがあったのを思い出した。
障害者自立支援法のことでは、通訳としての専門性を持つ要約筆記者事業になることで、要約筆記者が医療従事者ととともに、中途失聴・難聴者の診療、健康管理に関わることが出来るようになる。実際に、東京ではろうあ者が入院している病院では、医師やナースのケース会議に手話通訳者もろう者のコミュニケーションや日常生活について専門的に助言するために出席している。

要約筆記者事業が、障害者自立支援法ですべての市町村で実施が義務つけられ、法的に通訳であること(要約筆記の内容が意思仲介である)、実施しなければならないこと(義務化)から、より専門性を確立することで、中途失聴・難聴者に対する権利擁護(情報を受ける権利から、健康的文化的生活を送る権利まで)の担い手となります。
要約筆記奉仕員では身分保障がなく、技術と知識、モラルにおいて不十分なため、権利擁護の担い手にならない理由だ。

要約筆記が長い間奉仕員事業であったことは、私たちの要約筆記に対する専門性の理解が不足していたこと、権利擁護とは何かについて意識が低かったこと、要約筆記者の好意を「支援」と誤解していたことなどがある。また、ろうあ者を支援していた手話通訳者、自治体の理解が低かったことも一因と最近思うようになった。

ラビット 記