NHKの生解説放送の取り組み


二の酉の市NHKの生解説放送の取り組みを聞く機会があった。これまで解説放送と言うと、1週間前に台本を手に入れ、ト書きを参考にどの場面の何を「解説」するかの副音声用の台本を作成してから、オリジナルと副音声を録音する方法だった。従来の事前制作の字幕制作に似ている。
しかし、NHKは今年のトリノパラリンピックの競技速報と総集編で生解説放送に取り組んだ。昨年、教育テレビの「ともに生きる2005働く!」でも実施したそうだが、連続して毎日取り組んだのは初めてとのことだった。
スポーツ中継なので、解説者と実況アナウンサーがいる。その話の合間を縫って、コメントをつけるのだが、タイミングよく、「描写」と「説明」、「感性を表現」しなければならず、事前に良く情報収集の取材をするとか、放送現場担当者との打ち合わせが大事だと話されていた。
印象的だったのは、ジャーナリストとしての放送センスが求められると言われたことだった。ないことをあたかもあるかのように話さないとか、確実でないことを話さないという放送倫理性が求められると強調されていた。こうした放送倫理性があるからこそ、視聴者側は安心して見られる。

字幕放送のリスピーク方式でも、事前の取材が欠かせないと聞いている。その場の音声や情景をどのように要約して、何を伝えるかはその場で聞こえたり、見えたりしたものだけでは判断できない。
超高速入力を売り物にする字幕制作事業者も、入力と校正を同時に行うシステムを開発して、1分間400字でも入力できると「豪語」していたが、話し言葉をそのまま文字化して、情報が伝達できると考えているのは「速記」という記録の事業者だからだ。
日々、膨大な音声情報を聞いているだけに、その言葉の構文、単語を蓄積できる環境にある。それを利用して、その場のその時に伝える「文字通訳」技術を確立する考えが必要だ。

聴覚障害者や視覚障害者の放送のニーズは何か、もっと真剣に考えて取り組んで頂ければ、発展していくだろう。