地域における要約筆記者の役割(2)

私たちは、要約筆記事業が地域生活支援事業の名の下で行われることにもっと注意を払うべきだろう。

難聴者は、地域社会から疎外され、また自ら関わりを避けていたということがあるが、そのことも含めて地域社会の中で支えられなければならない。
これが、新しい社会福祉のメインストリームである地域福祉の基本的考えだ。行政と住民が協動して、障害を持つものも持たないものも暮らしやすい、安心して過ごせる地域づくりを目指すことはどういうことか考えてみたい。

要約筆記はどういう支援なのか、一般の難聴者自身は知らないので利用しない。たいていは、難聴者協会や難聴者のいろいろな団体かが例会やイベント等でOHPによる要約筆記が行われているのを初めて見て、知ることになるのではないか。

しかし普及が遅れているのは難聴者のせいでも難聴者協会のせいでもない。聞こえに支障のある人々に要約筆記というコミュニケーション支援サービスがあり、利用を呼びかけるのは行政の本来の役割だ。
障害者自立支援法以前は要約筆記事業は都道府県で行われていたのがほとんどで市町村で実施していたところは少ないので、必須事業化されても障害福祉課の職員ですら知らない。未だに要約筆記者派遣事業を行っていない理由として、ニーズがないというのは話が逆だ。他の市町村、過去の都道府県の事業をみればニーズのあるのは一目瞭然だ。

要約筆記が地域の他の社会資源にどういう支援をするのか、どういう資格を持った人が支援するのかが知られていないことも一因だろう。
(続く)


ラビット 記