松江市のコミュニケーション支援事業の理解不足

松江市は、18年3月31日の松江市告示第217号で「松江市聴覚障害者コミュニケーション支援事業実施要綱」を定め、4月1日から実施している。

第8条に、費用負担が無料と明記されていることから、厚生労働省の主管課長会議でもこの実施要綱が配布された。これは、現在の制度を後退させないという国会審議の際の厚生労働大臣の答弁にも沿うものであるし、当局も市町村が決めることではあるが、現行通り無料で続けることになると言っていた。

しかし、手話通訳者が派遣されるのに、要約筆記者ではなく、要約筆記奉仕員になっているのは、残念だ。
厚生労働省の実施要綱では、「要約筆記者」を派遣することになっており、その要約筆記者に要約筆記奉仕員があたることになっている。
これは、要約筆記者が、これまでの要約筆記奉仕員ではないことを示している。しかし、国は要約筆記者養成・研修事業の実施要綱も出されておらず、要約筆記者養成通訳課程のカリキュラムが発表されていない段階ではやむをえないのかもしれないが、来年度の事業実施前に改正をして欲しい。

要約筆記奉仕員の派遣事業は厚生労働省の通知で行われており、法律で実施されていたわけではなかった。しかし、障害者自立支援法では第77条第2項で市町村の必須事業として、実施主体が市町村と法律に明記された。
また、2000年の社会福祉基礎構造改革による関係八法が改正され、権利擁護の事業として手話通訳事業、要約筆記事業などが社会福祉法人第二種事業として追加された。この法定化されたこと、支援費制度のスタート、グランドデザイン案の発表、障害者自立支援法の成立の流れを見ると、要約筆記事業は行政の責任による権利擁護の事業でなければならなかったのだ。奉仕員事業ではその責任を持ち得ない。

このことを、全難聴は福祉医療機構の助成事業で「要約筆記者制度への転換」の報告書で明らかにした。行政は、要約筆記「者」事業になった意味を十分理解して欲しい。

タイミングが合わなかったが、次年にはその他の市町村も含めて、要約筆記者派遣事業として実施して欲しい。

ラビット 記